Windowsのサンドボックス機能を利用する
近年、ランサムウェアや標的型攻撃など、企業を狙ったサイバー攻撃はますます巧妙化また多様化しています。情報システム担当者やセキュリティエンジニアの皆様におかれましては、日々最新の脅威情報収集やセキュリティ対策に奔走されていることと思います。
しかし、多層防御を施したはずのシステムにも、未知の脆弱性は存在しうるもの。もしも、悪意のあるプログラムが社内ネットワークに侵入してしまった場合、その被害は計り知れません。
そこで重要となるのが、"万が一" に備えた対策です。侵入を完全に防ぐことが難しい以上、仮に侵入を許してしまった場合でも、被害を最小限に抑える仕組みが必要です。
本稿でご紹介する Windowsサンドボックス は、まさにその "万が一" に備えるための強力なツールです。Windows 10 Pro以降に標準搭載されているこの機能は、隔離された仮想環境を提供することで、不審なファイルやアプリケーションを安全に実行し、その挙動を確認することを可能にします。WIndowsでサンドボックスを起動すると、以下の画面となります。
この図から分かる通り、Windowsの画面の中に、もう一つWindowsがあるように見えております。この内側のWindowsのことをサンドボックスと呼んでおります。
今回は、企業の情報システム担当者やセキュリティエンジニアの皆様に向けて、Windowsサンドボックスの概要、目的、そして具体的な活用例について詳しく解説いたします。
サンドボックスとは?
サンドボックスは、コンピュータセキュリティの分野で、実行するコードやプログラムを安全に隔離するための技術です。企業環境では、未知のアプリケーションや感染の疑いがあるファイルをテストするために、サンドボックスが重要な役割を果たします。これにより、セキュリティ担当者は安全性を確保しながら、効率的に業務を進めることが可能です。
より具体的には、サンドボックスとは、OS上に構築された、完全に隔離された仮想実行環境 のことを指します。この環境内でのプログラムの実行やファイルの操作は、ホストOSや他のアプリケーション、そして重要なデータへ影響を及ぼしません。
例えるなら、サーバー上の孤立した仮想マシンのようなものです。仮想マシン内で走らせた任意のコードは、外部に影響を与えないのと同様に、サンドボックス内で実行されたプログラムも、外部環境に影響を与えることなく、安全に動作確認を行うことができます。実験が完了したら、速やかにサンドボックスを破棄するだけ、あとは何も実施するとはありません。
Windowsのサンドボックスの特徴は?
Windowsのサンドボックスは、軽量でリソース効率が高く、特にWindows 10 ProやWindows 11 Pro以降のバージョンで簡単に利用することができます。これは、企業内でのテスト環境構築が迅速かつ費用対効果が高い点で優れています。ホストマシンとは分離された環境で作業でき、作業終了時にその痕跡は完全に削除されるため、セキュリティリスクを低減します。
Pro以上のエディションで利用が可能なのですが、Homeエディションでは利用できません。
Windowsでのサンドボックスの目的
Windowsサンドボックスは、企業情報システムの健全な運用を支援するための強力なツールです。その主な目的と利用シナリオは以下の通りです。
- 安全なテスト環境:未知のアプリケーションやファイルを安心して実行し、その挙動を観察することができます。これは特に新ソフトウェアの導入時や、不審なファイルがメール添付で届いた場合に有効です。
- 仮想環境:完全に隔離された仮想環境を提供し、サンドボックス内での全操作がホストシステムに影響を及ぼさないことを保証します。こうした隔離は、開発やテスト業務において信頼性を支えます。
- セキュリティ対策:マルウェアやウイルスの特定と除去に役立ち、重要なデータとネットワークの安全性を高めます。
- アプリケーションの開発とテスト:新しいアプリケーションの機能テストを行うために、安全で柔軟な環境を提供します。
- ファイル共有:サンドボックス内での作業結果をホスト環境と安全にやりとりすることで、業務の効率性を向上させます。
具体的な使用例
ビジネス目的での利用では、以下のような具体的な使用例が挙げられます。
- ブラウザで怪しいサイトを閲覧する:業務中に未知のWebサイトを訪れる必要がある場合、サンドボックスでの安全なブラウズが可能。
- 怪しいexeプログラムの挙動を確認する:怪しい実行ファイルをリスクを負わずにテストすることで、企業ネットワークを保護する。
- ホスト側環境を汚さずにソフトをインストールして試用する:企業システムに影響を与えずに、新規ソフトウェアのトライアル可能。
Windows 10 Proでサンドボックスを起動する手順
ここでは、サンドボックスの前提条件を説明し、続いて、Windows 10 Proでサンドボックスを利用する手順を以下に示します。
サンドボックスの実装要件
以下にサンドボックスを起動するうえでの前提条件を示します。
引用について - Microsoft Windows サンドボックス
- ARM64 (Windows 11 バージョン 22H2 以降の場合) または AMD64 アーキテクチャ
- BIOS で有効化された仮想化機能
- 少なくとも 4 GB の RAM (8 GB 推奨)
- 空きディスク領域 1 GB 以上 (SSD を推奨)
- 少なくとも 2 つの CPU コア (ハイパースレッディングを使用した 4 コアを推奨)
おそらく、最近のほとんどのWindowsマシンであれば、問題なくクリアしているはずです。また、上の通り、エディションとして、ProあるいはEnterpriseが必要です。Homeエディションには搭載されておりません。
Windowsの機能の有効化または無効化
設定 > アプリ > アプリと機能 > プログラムと機能 > Windowsの機能のから、Windows サンドボックスをクリックしてください。
再起動
サンドボックス機能の有効化後、再起動が必要になります。指示通りに再起動します。
スタートメニューからサンドボックスを起動
スタートメニューを開き、Windows Sandboxをクリックして起動してください。
これにより、Windows 10 Proにおけるサンドボックス環境は、安全でありながら簡便に、企業のセキュリティ戦略の一環として実装することが可能です。セキュリティ担当として、この強力なツールを活用し、システム全体の堅牢性を高めましょう。
サンドボックスを終了する手順
単純に右上の×をクリックするだけです。
サンドボックスを閉じると、すべてのソフトウェアとファイル、および状態が自動的に削除されます。サンドボックスは起動するたびにクリーンな状態で利用できるため、終了後には何も残りません。これにより、サンドボックスは自動的にデータが削除されるため、ホスト環境に影響を与えることはありません。
まとめ
Windowsサンドボックスは、企業のセキュリティ対策において、非常に有効なツールです。容易な導入と運用、そして高いセキュリティレベルにより、未知の脅威からシステムを守ることができます。
ぜひ、この機会にWindowsサンドボックスを導入し、より強固なセキュリティ体制を構築することをおすすめいたします。